求道の旅 3

俺は、自らの愚かさから、右足を三ヶ所骨折した。何とか、三度目の一年生にならず、進級して、二年生。しかし、やはり、自らの単車の運転技術に慢心があった。だから、大きな痛い目に、親からもらったこの身体を傷つけてしまった。一から、技術を研き直さないと!当時は、ホンダから、TLR200という、トライアルマシンが発売されていた。公道走行可能。トライアルという競技はスピードレースではなく、大きな障害物を乗り越えたり、じっと、足をつかずに止まっているテクニック等々を競うレースだ。(今でも白バイ隊の全国競技に入ってます。)私は、TLR200を買った。結果、片手だけで、何分でも静止出来るまでに、更には、直径1m位の丸太木にも登れる様になった。そんな、晩冬のある日、そうだ、熊野まで、山越えをしようと思い立った、二回目の骨折後、間もない頃であった。(何回も骨折してるから、定かではない。)自らの精神と、身体を鍛える、試す旅に出た。山の中では、まだ、アイスバーンが、残っている、健康な足なら、何とかなるだろうが、ギブスを自分で切って、抜糸も自分でした、傷口は、まだ閉じてない。ここは、慎重に。アイスバーンの手前で、バイクを降り、押して滑らせて、アイスバーンの向こうに、引っ張った。上手くいった。再び走行開始。春の陽射しの暖かい、熊野への道であった。奈良は、寒くて凍てついてるのに、峠を越えるとこんなに春!えらいところに、閉じ込められていたもんだ、けたくそ悪!しかし、今の、この心地良さ。生きてて、腕も研いてきた甲斐があったな!と熊野灘まで、出た時の感動は、今も消えない。